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これは一人のマイノリティーが書いた自分自身とこの国の救いなき来世についてのレポートである。W.ジェイムスは労作「宗教的経験の諸相」で“超感覚者は無敵である”と言ったが果たしてそうだろうか。この時代、むしろ私は“常感覚者は巨象である。我々はその足に踏み潰されないよう必死に逃れる蟻のようなものだ”と思う。しかし今、孤立の怖れを捨てて私はこう叫ばねばならない。

“人々よ、長い眠りから目覚めよ。無知の麻薬の快楽に耽るな。そしてこの警告を受け入れる人々に神の恵みあれ。”

SF (2)

 日本語で海が生命を「産む」の名詞形なら月は「付く」の名詞形である。⑥で月は五万年前にミネルバの衛星が地球に付いたものであるという話と符合する。ノアの洪水は地球に月が付いた時の大変動であり、ミネルバ人の巨大な船(方舟)が地球上のあらゆる動植物を運んで行ったのは人類が生まれるはるか昔のことである。また地球にサピエンスが誕生したのは洪水による大変動以降であり、これらは創世記の順序だてとは全く違う。イギリス人が創世記を書けば旧約聖書とは全く違うものになるだろうと考えた。ミネルバ人の手には指が六本あり、十二進法のイギリスはミネルバ人の国ではないだろうか。コンピューターは英語に馴染みやすい。霊界で「イギリス人はすごい」と言う者がいる。日本語で英国(英知の国)とはよく言ったものである。ラグビーは For the
team に徹している。昨年ワールドカップを見ながら、大戦でドイツが負けたのはラグビーをやらないからではないかと思った。
これまでの話ではチューリアンもジェヴェレンも一つの星は同じ言葉を話すようで、各民族が違う言葉を話す地球は全く事情が違う。これは神が人間同士のコミュニケーションを難しくして地球文明の発達を遅らせる目的があったのではないだろうか。もし人間の科学文明が高速に進歩すればまた何を仕出かすか分からない。しかし言語によって国を分けるとどうしても線引きをめぐって争いが起き、大国と小国、先進国と後進国の差が生じる。このやり方は正解だったかどうか。コロナウイルスのパンデミックも自国優先より協調第一へ見直しせよとの世界への警告ではないだろうか。歴史を見ても次はどこで同じことが起きるか分からないし、その時は協力して初期沈静化することがひいては自国のためでもある。中国を悪者にすれば済む問題ではないと思う。
私見ではイギリスは複雑な宗教事情を抱えている。英国国教会の背後に何があるか。これだけホーガンを読むとホーガンがどうなったかの情報が入る。彼に救済が及ばなかったと聞いて、ため息をついて二階の窓から煙草の煙を吐き出すと「ざまみろ」と声がした。ホーガンの宗教観と私のそれとはかなり違っているのを感じていたから「内なる宇宙」を読めば乖離がさらに広がりそうで気が重かった。
日本では仏教学の中村元教授が間違いに気付いて「実情がこんなだとは知らず仏教の後押しをしてしまった」とイツハクに謝ったそうである。三島由紀夫は仏教にさして疑問を抱かなかったのではないか。もし彼がヨーロッパに生まれていたら彼の作品は違っていただろう。人間は他人の間違いには気付くが自分は正しい、自分の住む場所だけは良い所と思いがちである。

内なる宇宙・上JPホーガン)
前掲⑥⑦⑧の作品を通じて主役を演じた原子物理学者ハントはホーガンの分身であろう。今回は⑧で地球人の陽動作戦に引っかかって戦わずして敗れた後、自分たちのリーダーを失って政情不安なジェヴェレンにハントが赴くことになる。またいつも彼と二人三脚を組んだ生物学者ダンチェッカーも同行する。惑星ジェヴェレンにはシャピアロン号のクルーたちと地球人代表が駐留しているが共同統治組織(JPC)による行政はあまりうまく行っていない。彼らはハントの上司コールドウエルに相談して問題点の発掘とその解決のための助力を求め、クルーたちとは旧知の二人の派遣が決まる。反政府デモが横行する政情不安の原因には現在停止されたジェヴェックスの復活要求もありそうである。とは言えジェヴェックスは完全にストップしている訳ではなく、表向きは日常業務、例えば銀行のトランザクション処理や交通システム管理などのためには稼働している。しかし裏ではニューロカプラーを通じてジェヴェックスに入り浸る者たちもいて、そういうコンピューター・アディクトのための闇商売もある。だからジェヴェレンにはディストピア的な、また禁酒法時代のアメリカ的な雰囲気がある。邪教のカルトも自分たちの勢力拡大のためにジェヴェックスを利用しようと企んでいる。これがジェヴェレンの状況である。

星間トリップの任務が決まる前に自宅に突然訪ねて来た後述ジーナとの会話で、ハントは「ドイツには“人は知られざる真実(サタンは悪魔ではない)より周知の伝説(サタンは悪魔)を好む”という格言がある」と言う(p58-59)。これはジーナの意外な宗教論に話を合わせたリップサービスであり、ハントはこの格言の意味を真剣に取って言った訳ではない。ハント即ちホーガンは信仰を現実逃避に過ぎない(p82)と見ているが、この格言をもっとシリアスに考えるべきだった。前項の⑧に書いたが「歴史は繰り返す」という諺があるように、かつて太古に土星の時代がありそこでサタンは神々の筆頭だった。サタンには本質的な人間の善悪を見抜く透察力があった。多分審判でホーガンに「あいつはサタンだ」と耳元で囁いた者がいたのだろう。それが悪の罠だと気付かなかったホーガンはサタンを悪魔だと信じていたからサタンの方へは行かなかったし、それが命取りになった。新訳聖書に「サタンはお前たちを篩に掛けることを願い出てゆるされた」とあるではないか。聖公会はエッサイム(クラバック)が主導権を握っている世界である。このことは後で触れる。

物語の筋とは関係ないがガニメアン科学の驚異を語る例として「水1グラムが消滅するのに百億年を要するスピードで物質は無へ向けて絶えず崩壊している。物質は通常の宇宙とは別の法則が支配する超次元空間に還るが逆に生成もしている。消滅と生成の差だけ宇宙は拡張している(p121)」を紹介する。
ジーナは好奇心が強く、これまで何冊か本を書いている。それが既存の常識をひっくり返して物議を醸すような内容ばかりだと言うが、私には逆にすんなり納得出来る。「過去二千年間教会が語って来たことは間違いなの。教会がキリストの教えだと説いていることをキリスト本人は何も言っていないわ。キリストは権力を笠に着て庶民大衆を弾圧したり搾取するパリサイ人や神官や書写役の言うことを聞くなと言っただけなのよ。信者はただ廉直と誠実を心懸けて、儀式も教義も組織の約束事も守る必要ないのよ」「中世の異端裁判も聖戦も土地収奪も権力闘争への介入もキリスト本来の教えとは一切関係ないのよ」「聖パトリックに導かれたアイルランドだけがキリスト教を守り通した。パトリックの教えはスコットランドからイングランドを経て北ヨーロッパまで広がったがジュベレンがキリスト教に毒をもたらしたために廃れてしまった。アイルランドは16Cにヘンリー8世が国教会を強制した時それに反発して対抗上ローマ教会に属した」(p153~155)以上がジーナの論点である。彼女が儀式や教義を通して権力を笠に着るローマ教も国教会もキリストの教えとは違うと言いたいのには私も同意するが、それらがジュベレンの企みかどうかは何とも言えない。ジーナはパリサイ人や神官が「貴方たちの父は悪魔である。悪魔はもともと人殺しである」と言われたことには触れていない。原作者ホーガンはその点を軽視したのだろうが私には肝心なことだと思われる。ホーガンと私の相違点である。いずれにせよキリスト教の勧誘はお断りだとハントは言う。
ジーナもジェヴェレン旅行に同行し、星間宇宙船ヴィシニュー号に乗船する。到着までの船中二日間に初めてパーセプトロンを経験するが、コンピューターが人間の中枢神経にまで作用することに違和感を抱き、またヴィザ―が自分の隠された欲望を刺戟したり思い出したくないことまで意識させることに不安を覚える。彼女のようなためらいはノーマルな反応ではないだろうか。私もそういう機能には潜在的に拒否感がある。②の「三体」のようなゲームもありチャーチル、ベートーベン、アインシュタイン、マーク・トウェインらが登場してジーナと会話する。エイン・ランドの「考えても御覧なさい、ほとんどの決定はそのことについて何も知らない人が下すのよ」は私に色々と陰口して変人扱いする権威者(多分仏教関係者)への反論になるだろう。

ジュベレンの首都シバンに覚醒螺階教の指導者アヤルタが現れる。この宗教は複雑難解な階梯論、自我の確立と最終的な個の解脱、輪廻転生などの教理を持つ(p202)。何やら仏教に似ていなくもないが、裏で犯罪組織と関係している。螺階教のライバルは光軸教であり、共にハイぺリアを理想郷にしている。
ヴィシニュー号もシバンに到着しハントらは遠くにシャピアロン号が停泊しているのを見る。一行の乗ったマイクロバスは途中犯罪組織が仕組んだ高速道路の事故に遭遇し、螺階教の集会もあって立ち往生する。やむなく乗客は大混雑の市中を歩いてJPCのオフィスへ向かうが、人波にもまれてハントは一行とはぐれ、偶然出会った地球人に連れられて入ったのはとあるビルの中の怪しげな女たちのいる一室だった。女の一人ニクシーは「ジェヴェックスが停止したお蔭で今私たちの商売は繁盛している」と言う。そう言う彼女もジェヴェックス中毒患者で過去の人格を喪失した一人だった。ニクシーの案内でダンチェッカーらと合流したハントは休息を取った後JPCに向かいシャピアロンのクルーと旧知を温める。ガルース(シャピアロン号船長)が「ジェヴェレンには社会的病根があり正体を突き止められるのを待っている」と言うのに対しダンチェッカーは「地球の病根は数千年前ジュベレン人が故意に迷信を吹き込んだからだ。地球では社会主義が人間を無理やり変えようとして失敗した。ティユーリアン的社会主義は地球人の本性とは相容れない異質なものだったのではないか」と反問する(p256)。私にはむしろ社会主義において権力者(スターリン、毛沢東、チャウシェスクetc.)とその機構が社会主義を自分たちのものにしようとしたのが失敗の原因ではないかと思われる。その典型が北朝鮮の社会主義で、それは人民のためと言うよりサンケイ新聞が言うように「金(キム)の、金による、金のための社会主義」である。ジュベレン人が吹き込んだ迷信とはギリシャ・インド・エジプト・ユダヤ・インカ等の宗教を指すのだろうか(ガバメントがグノーシスを支持するのはギリシャの宗教だけは他と違うという意味にも取れるがギリシャにも悪魔はいた)。他にも宗教はあるし中国や日本古来の宗教はどうだろうか。この種のジュベレン人が本当に地球に来たのならその目的は何のためか(私がカニバリズムとの関連を考えているのはご推察のとおり。前項のも人間を食う者がいることを書いているが冗談半分で真面目に警告してはいない)、また数千年も前どうやって来たのだろうか・・・UFO以外考えられない。

ガルースが非科学的なジュベレンの宗教家を「彼らはどこか別の宇宙(つまり霊界?)から来たのではないかと思う程精神構造が違っている。物事の予知可能性を自然にあるまじきことと受け取る。機械の原理などには遠く理解が及ばない(この認識は間違っていると思う)。魔術や心霊現象を信じている。ならばジュベレン人に迷信を植え付けたのは誰か。どうもジェヴェックスが関わっているらしい」と言う。ガルースの部下で科学者のシローヒンが引き継いで「コンピューターの設計者の性格や思想がシステムに投影されることは充分考えられます。アヤルタ(螺階教指導者)は突発的な行動に出るし情緒不安定な気味があります。その上猜疑心が強く病的です。彼らの説く信仰は自分の意志を押し付けて他者を支配しようとする異常な執念の表われです(中世カトリックの異端裁判を想起させる)。富に対する底なしの欲望、我欲我執の強さは常人の想像を絶するばかりです(オーム然り、そういう宗教は確かにある)」と言う(p259~260)。これに対しダンチェッカーは「ジュベレンがジェヴェックスを作った、そのジェヴェックスがジュベレンを作った、と言うのでは堂々巡りではないか」と言う。シローヒンは過去を紐解いて「アヤルタは例外なく大人になってから突然神懸かりし(p261)、自分は霊感を受けて導者になったなどと言い出す。昔はそのようなことはなかったし、そういう現象が発生したのはジェヴェックスが出来てからだ」と言う。

螺階教(ニールー神、ヴァンドロス神殿)のアヤルタが暗殺され光軸教が力を得る。その指導者ユーペリアスは覚醒者を自認し「ジェヴェックスはシステム内に仮性人格を生成し、それを生身の人間に乗り移らせる能力を獲得した。自分はカプラーから普通の耳では聞こえない声を聞き、異次元世界の記憶を与えられて絶対者の化身となった」と信じている。ジェヴェックスの復活が彼の念願である(p267)。人間がコンピューターに乗っ取られる訳だが、ホーガンは何もかもコンピューターに頼りすぎではないか。私にはこういう現象を理解するにはホーガンの念頭にない「悪意ある見えない外部エンティティー」の存在を抜きには考えられない。彼らは生まれ変わらないから長い間の知恵を貯えていて決して幼稚ではない。そもそも知恵とは物質ではない。そういうものが地球に来て夢や霊感や心裡誘導を通じて邪教を広めたのであってジェヴェレン人が来たのではないと思う。前項でランビアンが私に「俺たちは悪魔ではないぞ」と言ったのはその意味であろう。インモラルな趣味や不健全な場所は良き仲間を追い払い悪意あるエンティティーを招くのである。それは人間が思いもしなかった時と場所とやり方で人間を待ち構えているから油断ならない。

螺階教の後継アヤルタが現れ絶対真理(どこかで聞いた事がある言葉ではないか)を悟ったと公言し「立ち返りたる者」の称号を名乗る(p286)。ハントは今までジェヴェックスを単に情報処理ネットワークだと考えていたのだが、ジェヴェックスの淫靡なサービスに耽(ふけ)る者たちがいることをはじめてニクシーに教えられて驚く。「ジェヴェックスはね、幻想を生むのよ。何でも思い通りになるの。こうだといいなあ、と思えば夢が叶うの。ジュヴェレン人にとってはもともと現実なんて必要なかったのよ。(p346)」とは、はっきり言えばコンピューター・アディクトは快楽中枢を刺戟されて女なしでも(または男なしでも)セックスと同じ興奮と満足が得られるということであろう(*註1)。宗教指導者について「アヤトラ(アヤルタ)たちはね、どこか別の、しかも仮想ではない実在の世界から生まれてくるの。何とも言えない不思議な世界でね・・・でも、中にはうろたえを自分の胸ひとつにおさめて、まわりと折合いよくやっている人もいるわ。・・・わたしにとって、これはとても大切なことなの。わたしもその(自分を忘れた)一人だから(p348)」と説明を受ける(仮想ではない実在の世界とは霊界に他ならないがハントはその存在を理解しない)。さらに地球人二人、ガニメアン一人の科学者はニューロカプラーに心地良げに横たわったニクシーにジェヴェックスに憑りつかれる前彼女がいた場所を訪ねるが「そんなこと(ジェヴェレンか地球人かミネルヴァ人か)はどうだっていいの。わたしが言っているのは、世界だか宇宙だかしらないけど、とにかく、わたしが前にいたところ」ダンチェッカー「すると何かね?きみはどこか別の世界からやって来て、この世界の誰かに乗り移ったというのかね?」ニクシー「そうよ、その通りよ。命の流れに乗ることを知っていれば来られるのよ(p380)」
霊界を語ることは間違いやすいし騙されやすいが迷信を語ることではない。彼ら科学者三人自身も含め命とは霊界からやって来た魂が肉体に宿る事だと認めない限りニクシーの言っていることは理解できない。聖書に「言は人となった」と書いてある通りである。

内なる宇宙・下JPホーガン)
日本語版への序文でホーガンはこの本は彼流のファンタジーだと書いていて下巻にファンタジーが現れる。
⑨のジーナはシバン在住のドイツ人バウマーに騙されて光軸教の指導者ユーペリアスの手に落ちる。ユーペリアスはジェヴェックスによって彼女の脳内記憶を盗みJPCの内情およびハント・ダンチェッカー来訪の目的をすべて掴んだだけでなく、彼女にニセの記憶を植え付ける。バウマーはジェヴェックス中毒患者の一人でユーペリアスの手先であり、かつてハンス・バウマーという人格を構成していたすべてが彼の神経組織から消去されていた。しかしこのような記憶喪失は時間が経てば戻る、とニクシーは自分の体験をふり返って言う(p66)。シローヒンの質問にニクシーは「記憶の限りわたしたちがいた世界には簡単な道具があるだけで機械装置はなかった」と答えるが(p28)見えない世界にUFOが存在するようにこれは全く違うと言わざるを得ない。ホーガンの限界であろうか。だから後半に出て来るファンタジーも子供だましである。

ハントは帰って来たジーナに「何者かがきみに(無意識のうちに)接触したことは疑いの余地はない。つまりその時点までにきみが知っていたことはそっくり読み取られて敵はきみの記憶を書き替えた」と言う。ジーナは「何だか、自分が自分でないみたい。自分の体験にないことが記憶に紛れ込んでいるって、あまりいい気持ちのするものではないわ」と答える(p108)。それはそうだろう、もしこれが可能なら誰か正直者を犯人に仕立て上げて自白させることが簡単に出来る。
シローヒン「根底に量子的現実がある物理法則には複雑な構造を自立的に生成させるプロセスが潜在的に備わっている(量子は素子によるプログラムを内蔵している)。この物理法則と確率の法則に従って宇宙は生まれたし、その宇宙からもっと高度で複雑な存在が生まれて知性を顕現させた。さらに知性は印象と体験を認識した結果、個別な量子的要素の基本とは全く異なる統一的な世界が生まれた。だとしたらコンピューターのマトリックス宇宙にも高度に複雑な存在が出現することはありえない話ではない」ハント「従ってニクシーの世界がわれわれの知っているこの宇宙に実在しないことは明らかだが、どこかに実在することは疑いない」(p128~129)自己流に言い換えればこんな具合だと思う。これからコンピューターワールド・ファンタジーを展開する前の布石であろう。

ところで②の三体ゲームで秦の始皇帝が三千万の兵隊に旗を持たせてコンピューターの働きをさせる場面があった。ビットが左から右に並んでいるとして、一人一人の兵隊は入力されたデータの符号が+の場合自分の左にいる兵隊の旗が上から下へ下がれば右隣の兵隊は自分の旗が下であれば上げ、上であれば下げる。左の兵隊の旗が下から上へ上がれば右隣は何もしない。逆に符号がーの場合左の兵隊の旗が上から下へ下がれば右隣は何もしないし、左の旗が下から上へ上がれば右隣は旗を逆にする。ただし最初の兵隊は常に旗を上下するだけ。これを入力された数字の回数だけ繰り返す。これが二進法による計算である---合っているかしら(*註2)
実は私が30代初めにシステム部に移った時見た夢で、グーグルマップのオレンジ色の小さな人形のようなものがコンピューターの中で忙しく働いているのを見て一体何だろうと思ったことがあり、の三体を読んで訳が分かった次第。だからビットボーイたちは符号と左側のオン・オフの動きに合わせて右側がオン・オフを励起させているのだった。これを正しく行う個々のビットボーイ君たちがボンクラである筈がない。始皇帝の兵隊のように意識的に動くビットボーイの存在なくしてコンピューターは働かない。そんなものを見たことがあると書けば読んだ人はあきれるだろう(特に電子物理学者は開いた口が塞がらないだろう)が、言いたい事はコンピューター・マトリックスの中を覗いてもファンタジーなぞないのである。
ハントが「ニクシーの言う世界はジェヴェックスの副産物である(p129)」と言うのはホーガンのミステークで実際上何処にでもありそれが霊界と呼ばれるものである。ダンチェッカーが言う「(タイトルの”内なる宇宙”エントヴァースの)エント人は高密度大容量のデータ処理演算マトリックス内部に出現した世界の生き物として進化した(p143)」は「エント人はマトリックス内部で進化した」と要約するなら間違いではないが「エント人はマトリックス内部に出現(誕生)した生き物」ならば間違いだと思う。エント人はエントヴァース(霊界)からエクソヴァース(この世)へ渡りたいと切望している。
ダンチェッカー「エント人の存在を支えている情報のかたまりは出力領域で消滅し、エントヴァースから忽然と姿を消してしまう」ハント「ブラックホールの瞬間移動とおなじようなものだよ。情報内容が出力口を抜けて別の所へ実体化するわけだ」ダンチェッカー「(実体化したエント人が再び)帰る道はあるのだよ。ジェヴェレンのニューロカプラーだ。アヤトラも一般人もカプラーを使うことができる(p147)」。この会話でも、情報のかたまりが出力領域で消滅するのは、生まれる時霊はあの世からいなくなると共に人間は生前の情報記憶を失くすことを指す。死ねば魂はあの世に還るが、生きたままの人間でその霊があの世に帰ったきり戻らなければ(魂の緒を切られれば)人間は魂の抜け殻になる。ハントは「異類(エント人)はカプラーを介して人間の意識に侵入する(p215)」とも言っているがニューロカプラーとは必ずしも関係ない----ニューロカプラーで逸楽に耽溺するような類の行為が邪悪な霊の侵入を許すのである。
ハントの「地球の歴史を何千年か遅らせたのも、ティユーリアンを時空の泡に閉じ込めて銀河系宇宙を乗っ取ろうとしたのも、みんな彼ら(ユーぺリアス率いる光軸教グループ)の仕業だよ。彼らはもう一歩で宇宙乗っ取りを果たすところだったんだ(p170)」は光軸教を悪魔の宗教と見ている。ユーペリアスはジェヴェックス支配領域(つまり悪の支配)拡張のための奉仕者である(p194)。光軸教徒がもし理想郷ハイぺリアに行くだけならその宗教は他人にとって何の問題もない話だがそれは人を信じさせて誘う罠だから問題なのである。カニバリストの悪魔がジェヴェレンから地球に来て悪の宗教を広め、それと知らず信者になった人の子を滅ぼした。またジェヴェレン人に堕落の思想を吹き込んだ。主の祈りに「私たちを誘惑に陥らせず悪からお救い下さい」とある通りである。悪魔は今一歩で宇宙を支配する危機的な状況にあった。

ジェヴェレンとティユーリアンと地球を結ぶテレビ会議が開かれ、ティユーリアンの指導者カラザーも協議に加わる。カラザー「彼ら(エント人)にとってエントヴァースは危険に満ちた住みにくい環境です。彼らの多くはいつの日かエクソヴァースに渡るという希望にすがって生きています。その機会を閉ざすことは人道上許されますまい(p223)」「エント人はあらゆる意味合いにおいて立派に進化を遂げた知性生物です。ジェヴェックス解体は大量虐殺に等しい蛮行です(p242)」エント人とは霊界に住む者たちであり、大別してエロイムとクラバックの二通りの人種がある。クラバック優位で弱肉強食の霊界でエロイムは虐げられている。しかしジェヴェックス・マシンを解体しても彼らが虐殺される訳ではない。
コールドウエルが「エント人の置かれている状況、抱えている問題を理解してその解決をどう助けるか、そこを考えなければならない。エント人が乗り移るたびにジェヴェレン人を葬る必要もない(p243)」と言う発言がハントらをファンタジーワールドへ行かせる契機となる。イージアンは「ヴィザーはニューロカプラーで接続している人物の意識を読み取ってそっくりのエント人を作り出しエントヴァースに送り込める(p246)」と提案する。全体がヴィザーの内部であるバーチャルなパーセプトロン・ワールドとリアルなエントヴァースは同じということか?
カプラーに接続している人物とエントヴァースに送り込まれるその分身(サロゲート=アバター)は相互の情報交換ができない。ヴィザーが本人から読み取った意識のパターンすなわち人格をそっくりコピーして作った替え玉はエントヴァースにおける内部状況に合わせて独自の判断で行動しなくてはならない(p250)。ただし替え玉がエントヴァースで振舞う挙動はカプラーに接続し昏睡している人物にとって自分がそうしているものとして自覚され記憶される。実際上はこの替え玉はヴィザーによって作られなくてもすべての人間に「そっくりさん」即ちアバターとして具わっており、アバターはエクソヴァース(この世)での人間の経験や性格の情報を既に持っている。従って “エントヴァース内でエクソヴァースから吸い上げて収集・蓄積された過去情報をすべて本人(サロゲート)の意識に転写する(p251)”必要はないのではないか。ホーガンの認識はアバターの存在まで行っていなかった。

犯罪組織の協力を得てハントとダンチェッカーら五人が潜りのヤミ商売用カプラーを通じてエントヴァースに入り込むと、そこは村の広場らしい、何やら宗教的救済を求める大勢のエント人のいる場所だった(この設定は正しいと思う)。ここからファンタジーが始まるが正直言って付き合いきれなかった。
昔水木しげるの「悪魔くん」という連載漫画があって、年取ってメガネをかけた猫背のさえない神と悪魔くんが対決するファンタジック・シーンがあった。正確なことは忘れたが悪魔くんが神に槍を投げると神はそれをバナナに変えて投げ返し、悪魔くんがバナナをロケットに変えて投げ返すと神はロケットをフランスパンに変えて投げ返し、悪魔くんがフランスパンをミサイルに変えて投げ返すと神はミサイルをくまモンに変えて投げ返し、悪魔くんがくまモンをファットマンに変えて投げ返すと神は花びらの雨を降らせるというようなファンタジーだったと思う。まあこれと似たようなものである。しかし五人がエントヴァースに入り込んで何か収穫があったとは思えない。
ところが突然ジェヴェックスが切断され、従ってヤミ商売用カプラーも切断され、カプラー用ポートからジェヴェックスに繋がっていたヴィザーも切断される。折しもヤミ商売ビルに警察の手入れがあって外が騒がしく、エントヴァースに入ったハントら五人は覚醒して起き上がる。サロゲートが取り残されたと心配するが、サロゲートをアバターに例えるなら夢から目覚めて夢の景色が消えるのと同じで大したことではない。
ジェヴェックスを切断したのは光軸教の指導者ユーペリアスだった。彼はジェヴェックスの再統合を目指し長い間密かに準備しており、実行の時を狙っていた。そしてすべてのポートをアッタンにあるコントロールセンターから監視し、どこかで許可外のポートが開くと即座に切断した。これではヴィザーもジェヴェックスに入り込めない。
ジェヴェレン上空にはアッタンとの惑星ネットワーク用のデータ転送無人衛星がある。そこでシャピアロン号を上空に飛ばして作業船を出し、二人の宇宙服を着た作業員が衛星に取り付いた。シャピアロン号がブラックホールを作り出した瞬間はデータ転送衛星の周辺の時空が狂い監視の目が攪乱されるので、シャピアロン号が飛び立つ瞬間をねらって作業員はヴィザーを衛星にコネクトする。これでジェヴェックスが立ち上がればヴィザーがジェヴェックスに侵入し無力化する態勢が整う。この目論見は成功しユーペリアスの計画は頓挫した。オリジナルはもっと色々な事件や技術的問題があって込み入っているがラフな要約(大丈夫か不安)としてはこんなものだと思う。

ともかくこれで「星を継ぐもの」四部作シリーズの物語は読み終わった。しかし私には以下のようなとんでもない宿題が残された(まだ決定ではない)。
・SF (1) を掲示した後誰かが「このことは怖くて口には出せなかった。人間が言い出すとは思わなかった」と言った。ホーガンが書き残したことは単なる創作ではなく霊界の現状に直結しているようである。
・ヴィシニュー号は現在も運行されている。
・日本では北のある島がアッタン人の島である。この島に預けられた子供は帰らない。「どこがどの星の区域か覚えられない程色んな宇宙人が来ている」らしい。
・月は悪の拠点である。古語の「つきづきしい」はここから出た。月に気楽に一泊旅行するととんでもない目に会う。
・「ジェヴェックスは堕落した機械で嫌いだ」と言う者がいる一方「ジェヴェックスは更新された」とも言う。
・ジュヴェレンの宗教家は紫の衣を着て地球に来ている。ホーガンの警告は出鱈目ではなさそうである。
・やはり仏教はジュヴェレンの宗教と関係がある。アノクタラの宗派は螺階教のハイぺリアへ招かれ瑠璃光の宗派は光軸教の光の国へ招かれる(ただし喉を掻き切って血を抜かれ、肉を捌かれていなければである)。Hyperiaとは多足類のミジンコなどを指すが関係あるのだろうか。
・宗教哲学としては螺階教、光軸教ともに理論的には正しいのではないか。というのは霊界にはレイヤーがあり、一生を正しく生きた勝者は最上の霊的世界に招かれる。救いの光の世界もある。しかし宗教がそこへのルートを知っていて信者を導くかどうかは期待しない方がよい。ニセ宗教は平気で嘘を吐く。
・ヨーロッパもジュヴェレン宗教の影響を受け、霊界女たちはもはや手遅れな程堕落している。ナグ・ハマディー文書(エレーヌ・ペイゲルス)に、あんまり美しいので悪魔が人間の女に子供を産ませる話が出ていた。ドイツの女が「死んだ方がましだというような目に会わせられる」と言った所、悪魔が「それなら殺してやろう」と言い、それ以来殺して食われるようになった。悪魔のクソ理屈の例はいっぱいある。魅力的なヨーロッパの金髪美女にとって自分たちの美しさが仇なのは知っていて無駄ではないだろう。
・ミネルバ人と違い火星人には積極的に悪と戦う姿勢がある。
・有名な大手の会社はある仏教宗派の集合体らしい。その会社に何の偏見もないのだが。
・ドイツの宗教が立ち直ろうとしている。

ヤコブは紫衣の宗教の信奉者だったと思って間違いない。少々大胆な推測だが彼はユダヤ・インド・日本・イギリスで紫衣の宗教に貢献し、イギリスではキング・ジェームスに生まれ変わり欽定訳聖書の作成に関わった。旧約聖書・真言宗・伊勢神道・欽定訳聖書の背後にヤコブがいた。宗教は経典を作った者が幅を利かす。これらの宗教はクラバックの世界だった。カトリックは紫衣の宗教の中心だろう。ヤコブ(の階段)がヤマトにどんな不幸をもたらしたか知る人ぞ知る。仏教は外の宗派も真言に右へ倣えしている。ジュベレンをあまねく知らしめたホーガンの貢献は大きいが自分の言っていることの意味を理解しなかったと言われても仕方ないではないか。先ず「汝自身を知れ」である。
しかしつい最近、イギリスのどこかの教会内部とおぼしき場所でそこに巣食っている悪に対し巨きな三つの影が力を揮っているのが見えた。イギリスに新しい変化の兆しがあるかも知れない。   

ビットボーイと同じようなものの群れが煙草の煙の先から出ているのも見た。彼らは果敢に悪魔に挑んでいた。煙草に対する風当たりは強く特に女性は嫌がるがメリットもあり、ヤコブも煙草だけは苦手だったそうである。白血球やリンパ球のような免疫細胞と同じであろう。未来の物語の中でハントも煙草は手放さない。
ソファに横になってテレビを見ていた。すると誰かが私の考える方向を変えようとしきりに非難めいて話しかけて来た。目を閉じて聞いていると、希なことだが宇宙服を着た子供の幻影が近くに見えた。煙草の煙を防ぐためだろう。また地方の食べ物を紹介するバラエティー番組を見た夜、元アナウンサーの女性が宇宙服を着て空中を遠くから近付いて来る夢を見た。何の意味か分からなかったが多分彼女も異星から来た一人なのだろう。彼女が嘘つきの宗教の餌食になるのは忍びない。


*註1)若い頃友人が旅行中の暇つぶしに買った雑誌がほったらかしになっていたのを借りて読んだ。その中に筒井康隆のSFが載っていた。マスター・オブ・ベイションを自称する男が(コンピューターを使ったかどうかは思い出せないが)自分の脳の快楽中枢を刺戟し延々と逸楽に耽る話だった。やがて彼は何とかいう宗教を興して同志を募りその教主になる。作者の頭の中にジュベレンがあったかどうかは知らないが話が似ていると思った。ファンもいるようだがその時受けた感想があんまり馬鹿々々しくて彼の作品は生涯一冊も手にしたことはない。
(*注2)全体がマイナスになったら札止めの旗を上げる。札止めの状態では札止めでない時と逆に旗を上げ下げする。